国道十六号線は、都心からおよそ半径三十キロの円を描く大環状線。いくつかの新しいビジネスが今、この沿線から生まれようとしているし、新商品が売れるかどうかを試すパイロット・ショップがあちこちに店開きをしている。 国や人間と同様、道路にも栄枯盛衰があるが、この道は衰えることを知らない。古くは鎌倉時代、坂東武士が「いざ鎌倉」と馬に鞭を入れて疾駆した鎌倉街道に重なる。幕末には、八王子の鑓水に根を下ろした商人たちが上州や甲州から生糸を集め、横浜に運んで輸出する日本版「シルクロード」ともなった。いまでも十六号線近くの御殿峠には、彼らの豪壮な邸宅の面影を残す、立派な石垣が残っている。

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