「国益」とルール 畠山襄『通商交渉 国益を巡るドラマ』

執筆者:船橋洋一 2001年7月号
タグ: 日本 中国

 その部分、METIと書いてある英文の論文を読むうち、アレ、誤植じゃないのかこれは、MITIの間違いなのではないか、と思ってから、ああそうか、通産省は経済産業省に変わったのだっけ、と納得した記憶がある。 MITI(ミティ)は三十年近く前、経済記者として担当したことがあるし、その語感とともにわたしの語彙空間にすっかり定着していたから、省庁再編でその名称が消滅した時、日本の戦後がもう一つ終わったのかとの特別の感慨を持った。 日本の戦後の形成にMITIが果たした役割は大きかった。彼らは産業政策と通商政策のプロとして、戦後の日本経済の再建と発展の司令塔、かつ先兵として活躍した。そこには、戦国の武士のような男っぽい官僚たちが多数、参集した。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一(ふなばしよういち) アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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