それでも続く政権と財閥の危うい関係

執筆者:黒田勝弘 2002年6月号
エリア: アジア

経済改革が劇的に進んだとはいえ、それでも政権の意図に左右される韓国企業。政権交代で浮かぶ財閥・沈む財閥が出てくるのは、今も変わらない。[ソウル発]韓国での「政権と財閥」の関係をめぐっては象徴的な話がある。永らく韓国最大の財閥だった「現代」グループの創業者で、亡き鄭周永名誉会長が一九九二年の大統領選に出馬したときのことだ。一代で世界的な企業グループを築き上げ、当時すでに立志伝中の人物だった鄭周永が、何がもの足りなくて大統領を目指すのか、周囲は訝った。 ところが鄭周永の答えは「財閥(経済)では成功したけれど、その味はやはり政権(政治)の味には及ばない」というものだった。政治にコントロールされる財閥にはもう飽きた、財閥をコントロールできる政治の側に立ってみたい。鄭周永は、人生で唯一、味わわずに残されていた政治的権力を、一度味わってみたくてたまらなかったのだ。逆に言えば、「現代」といえどもそれだけ歴代政権には弱かったということである。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
黒田勝弘(くろだかつひろ) 産経新聞ソウル駐在客員論説委員。1941年生れ。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長兼論説委員を経て現職。2005年度には日本記者クラブ賞、菊池寛賞を受賞。在韓30年。日本を代表するコリア・ウォッチャーで、韓国マスコミにも登場し意見を述べている。『“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『ソウル発 これが韓国主義』(阪急コミュニケーションズ)など著書多数。
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