米国の戦略変化の中で「普天間問題」を考える

執筆者:柳澤協二 2012年1月16日
エリア: アジア
昨年12月28日、環境影響評価書が入っているとみられる段ボール箱が運び込まれた沖縄県庁守衛室前に集まった約70人の反対派住民 (C)時事
昨年12月28日、環境影響評価書が入っているとみられる段ボール箱が運び込まれた沖縄県庁守衛室前に集まった約70人の反対派住民 (C)時事

 米海兵隊普天間基地の移設問題が膠着している。政府は、辺野古沖埋め立ての手続きを進めているが、沖縄の同意が得られる見通しはない。  このままでは普天間基地は固定化する、との懸念の声があがっている。だが、「普天間の固定化」は、「危険の固定化」と同義である。同基地は、市街地の中心に位置し、離着陸や訓練のための飛行場周回経路の直下には9万人の住民がいる。騒音はもとより、墜落すれば大きな被害は免れない。  2004年8月の沖縄国際大学構内へのヘリの墜落事故は、夏休み期間中で、犠牲者を出さずに済んだ「幸運な」事故だった。パイロットの判断も正しかった。だが、そうした「幸運」はむしろ稀だ。万一住民を巻き込む事故があれば、全県あげた基地撤去運動が高揚し、他の米軍基地にも波及するだろう。米軍が「追い出される」ことになれば、政治的にも軍事的にも大きな危機となる。それ故、沖縄にとっても日米両国政府にとっても、「普天間の固定化」は、最悪の選択肢であり、それこそが普天間問題の原点であった。

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執筆者プロフィール
柳澤協二(やなぎさわきょうじ) 国際地政学研究所理事長。1946年東京都生れ。70年東京大学法学部卒業後、防衛庁入庁。長官官房長、防衛研究所所長などを歴任。2004年4月から09年9月まで官房副長官補。
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