「維新政治塾」と「松下政経塾」

執筆者:出井康博 2012年2月8日
タグ: 日本
エリア: アジア
勢いが止まらない「橋下ブーム」(C)時事
勢いが止まらない「橋下ブーム」(C)時事

 早ければ今夏とも噂される次期衆院選で、大勢の「橋下チルドレン」が生まれようとしている。その供給源となるのが、橋下徹・大阪市長の率いる大阪維新の会が3月に設立する「維新政治塾」だ。  維新政治塾では橋下自身が塾長を務める。塾生の募集は2月10日に締め切られるが、その1週前の時点で定員の400人を越える応募者があった。その中には民主党、自民党の地方議員や現役官僚などが含まれ、現職の国会議員からの問い合わせもあるという。  橋下は衆院選で候補者300人の擁立を目指すとされる。「300」という数字は、全国の小選挙区の数と同じだ。維新政治塾の塾生からも、相当数が候補者として指名され、当選していくことになるだろう。  1月初めに橋下が維新政治塾の設立を発表した後、大村秀章・愛知県知事や河村たかし・名古屋市長も同様の政治塾をつくると表明している。ともに前衆院議員である大村と河村の狙いも、やはり衆院選での候補者確保にある。2人は橋下と「第3極」での連携を目指しているが、大阪維新の会が全国展開すれば彼らの存在感は低下する。そこで自らの政治塾で「チルドレン」を養成し、第3極の候補者として擁立しようとしているのだ。  筆者は今月出版する「襤褸(らんる)の旗 松下政経塾の研究」(飛鳥新社)で、政経塾が果たしてきた役割と功罪について検証した。本稿では、政経塾の歴史を振り返りつつ、維新政治塾など新興勢力が持つ可能性と限界について考えてみたい。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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