「人手不足」と外国人 (61)

ベトナム人留学生「違法就労」を美談で糊塗する朝日新聞「配達」の変わらぬ闇(下)

執筆者:出井康博 2021年11月12日
エリア: アジア
1階に販売所が入るビルの上階で暮らすベトナム人奨学生の部屋。小さな冷蔵庫と簡易コンロで自炊している 写真提供:筆者(以下も)
販売所と留学生の力関係を考えれば、泣き寝入りをするケースが大半なのは想像に容易い。しかし、一般論を唱えるだけの奨学会あるいは入管庁が、留学生に手を差し伸べることはないだろう。この問題解決に必要なのは、朝日新聞の責任ある判断に他ならない。

「収入源」でもあるベトナム人奨学生

 朝日新聞販売所で横行するベトナム人奨学生の「週28時間」を超える違法就労——。法律を犯し、ベトナム人たちに長時間の就労を強いているのは販売所だ。ただし、奨学生を日本へ招き、販売所に斡旋している朝日奨学会の責任も大きい、と筆者は考える。

 奨学生の就労が「週28時間」に制限されることに関し、奨学会は当然、ベトナムでの採用時に十分説明しているはずだ。給与などの待遇も、「週28時間」の就労が前提になっている。それなのに、いざ販売所に配属されると28時間を超えて働かされ、残業代すら支払われないとなれば、奨学生は騙されたも同然だ。しかも奨学会は、休日の日数などで日本人奨学生と格差を設け、販売所での差別待遇を容認してもいる。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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