キューバ制裁から半世紀――孤立際立つアメリカ外交

執筆者:遅野井茂雄 2012年2月11日
エリア: 北米 中南米

 1962年米ケネディー政権がキューバのカストロ革命政権に対し経済制裁を発動してから、2月7日でちょうど50年が過ぎた。一国に対する経済制裁としては異例の長さである。

 革命以前アメリカ経済と一体化したキューバにとって、経済制裁の打撃は疑いなく大きいものがあったが、カリブの社会主義はフロリダ半島の目と鼻の先でしぶとく生き延びてきた。その意味で、制裁は明らかに失敗で、むしろカストロ体制が反米の下に体制を引き締める絶好の口実となるだけだったと言える。

 この間、カストロ体制は、最大の援助国旧ソ連に支えられ、20年前にはその崩壊によりパトロンを失うという最大の窮地に立たされた。レーガン政権による制裁強化で追い打ちをかけられたものの体制を維持、10年前からは突如出現した反米のベネズエラ・チャベス政権に幸運にも支えられている。弟のラウルの指導の下で、国家指令経済から混合経済体制へと徐々に自由化を進めつつ窮状を凌いでいるというのが実情だ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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