重大なナゾ多きオウム事件では、インテリジェンス情報が死活的に必要だ

執筆者:春名幹男 2012年5月28日
エリア: アジア

 NHKが26、27日の2夜連続で放映した「未解決事件ファイル2-オウム真理教」を見た。NHKは麻原彰晃死刑囚の肉声が入ったテープ700本を新たに入手したほか、元信者や元捜査員らから貴重な証言を集めた。

 新事実がいくつも発掘された。熊本県波野村事件当時からオウム武装化を目指していたこと、長野・神奈川両県警捜査一課がサリン密造の実態に迫る捜査を行なっていたことなど、興味深く、迫力があった。だが、インテリジェンスの立場からは欲求不満が残った。

 オウム真理教の一連の事件、年末に出頭した平田信被告らのほかは、刑事事件としては「未解決事件」ではない。それでもあえてNHKがオウム真理教の一連の事件を「未解決」と銘打ったのは、未解決のナゾが多々残されているという意味である。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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