苦境のプーチンが抱く「ミニ・ソ連」の秘策

執筆者:名越健郎 2005年4月号
エリア: ヨーロッパ

グルジア、ウクライナに続き、モルドバでも親欧米政権が選挙で勝利した。ソ連邦の復活を目指すプーチン大統領が温める策略とは――。[ティラスポリ発]旧ソ連圏で今はなき「ソビエト連邦」の面影を最も色濃く残す地域は、モルドバ東部のドニエストル川東岸だろう。 十八世紀からロシア人入植地だったドニエストル地方は、一九九〇年、モルドバの民族主義政策に反発し「沿ドニエストル共和国」の設立を宣言。九二年春、ドニエストル駐留ロシア軍とともにモルドバ軍と「独立戦争」を戦い、双方で千人近い死者を出した。停戦後の政治交渉は不調に終わり、モルドバ側との厳しい冷戦が続いている。共和国はロシアを後ろ盾にし、十五年間事実上の独立を維持。現在も千六百人のロシア軍が「平和維持」の名目で駐留する。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top