JR東海「リニア事業」苦境で前言一転「国費投入」を大歓迎

執筆者:安西巧 2016年9月26日
エリア: アジア
走行試験では世界最高速度の時速603キロを記録しているが……(C)時事

 

「アベノミクスを最大限ふかす」という安倍晋三首相(62)の掛け声とともに、8月2日に閣議決定された事業規模28兆円を上回る経済対策。その目玉の1つとなったリニア中央新幹線への3兆円の財政投融資(財投)による全線開業前倒し(2045年→37年)について、様々な疑問が噴出している。そもそも喫緊のデフレ脱却を謳うアベノミクスにとって20年以上先のリニア全線開業を前倒しする意味合いが理解不能なうえ、事業主体のJR東海にとっても、超低金利下での財投による資金コスト削減効果は極めて限定的。一方で、2年前に着工したリニア建設は随所で綻びが顕在化し、公約だった東京・品川~名古屋間の2027年開業予定が怪しくなっている。要するに、「視界不良になりつつあるリニア計画の信用補完として財投が利用された」(外資系証券の鉄道担当アナリスト)のかもしれない。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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