「欧州議会選」で「左翼」ポピュリズムはなぜ失速したのか

メランション氏が率いる左翼ポピュリスト政党「不屈のフランス」が票を大幅に減らしたことは象徴的だった (C)AFP=時事

 

 右翼ポピュリズム勢力の大幅な伸長が懸念された5月の欧州議会選挙は、ふたを開けてみるとそれほどでもなく、驚きに乏しい平穏平凡な結果に終わった。右翼が敗れたわけではなく、むしろ議席を増やしている。一方で、中道や緑の党系の親欧州派がそれ以上に伸長し、旧来の中道右派と中道左派が減らした分を補った。

勝者は「欧州議会」そのもの

 何よりの朗報は、1979年に欧州議会の直接選挙が始まって以来落ち続けてきた投票率が、初めて上向きになったことである。前回42.61%だった投票率は、6月18日現在で50.63%と、94年以来の5割復帰を果たした。特にポーランド、ハンガリー、チェコ、ルーマニアといったやや強権的な政権の国で大幅に上昇した。だから、一番の勝者は「欧州議会」そのものだといえる。日本記者クラブで会見した駐日EU(欧州連合)大使のパトリシア・フロアは「ブレグジットを機に、人々はEUの価値を真剣に考えるようになった」と振り返った。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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