砂漠から「第一列島線」へ――『アメリカ海兵隊』が戦車400両を全廃する理由

執筆者:岩田清文 2021年8月10日
エリア: アジア 北米
2020年11月、菅義偉首相を表敬したデイヴィッド・バーガー米海兵隊総司令官 ©AFP=時事
今年7月、アフガニスタンに最後まで残っていたアメリカ軍の戦闘部隊、約2500名が撤退を完了した。約20年に及んだ「米国最長の戦争」から手を引いた米軍は、今や「世界で最も危険な場所」となった台湾海峡に目を向けている。あらゆる戦争を常に最前線で戦ってきた『海兵隊』の大変革から、中国の覇権拡大に備える米国の本気度を窺い知ることができる。

 

7個戦車中隊を全廃、戦車400両を陸軍に移管

 米中大国間競争の時代、米国は中国の軍事力増強を自国の国益に対する挑戦と受け止めている。この挑戦に対応するため、ここ数年、米軍の全軍種において、新たな作戦構想や戦力構成の見直しが精力的に進められている。特に米海兵隊においては、その存在意義までをも根底から見直すという、ドラスティックな変革が進行中である。

 例えば、保有している7個戦車中隊全てを廃止し、海外に集積している戦車も含め約400両の戦車を陸軍に移管するとともに、海兵隊が伝統的に重視してきた水陸両用の戦闘強襲大隊を半減させようとしている。これを聞いた当初、筆者は驚くと同時にその背景を知りたいという思いに駆られた。陸上幕僚長として陸上防衛に責任を持っていた立場からすれば、「戦車ゼロ」というのはあり得ない考えであり(ちなみに、陸上自衛隊の戦車は近い将来、約300両になる)、また、「米軍はもう離島奪回作戦はやらないのか」とまで心配したほどである。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
岩田清文 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)。
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