「低成長とインフレの時代」という必然――ウクライナ侵攻・世界経済激変のシナリオ(後編)

執筆者:滝田洋一 2022年4月5日
ロシア産の商品の供給が減ることで、ロシア以外の国々が産出する商品にプレミアムがつく(ガスプロムネフチの石油精製施設、モスクワ、4月4日) (C)EPA=時事
国際商品がドルの代替資産となる「ブレトンウッズ3」が現実化すれば、世界経済は何がどう変わるのか。まず資源・食料輸出国に巨額の所得移転が起きるだろう。米国には比較優位が残るだろう。ロシアは中国の経済帝国主義に飲まれるだろう。そんなグローバリズムの陰画の中で、非資源産出国は、欧州は、そして日本は――。(この記事の前半は、こちらのリンク先からお読みいただけます

ロシア産エネルギー供給途絶でロシア経済はどうなるか

 国際商品におけるロシアの存在を確認しておこう。20年の原油輸出市場におけるロシアの比率は12.3%と、サウジアラビアの16.6%に次いで2位。天然ガスの輸出市場ではロシアの比率は19.1%と、米国の11.1%を大きく上回る1位である。

   原油についてはロシアの輸出分をまかなうだけの備蓄が世界全体としてはあるが、問題は備蓄の難しい天然ガス。つまり、天然ガスは気体のままでは大容量の備蓄設備が必要で、液化するには超低温での液体保管が必要となる。ドイツなど欧州では、ロシアからならガスパイプラインで運んで来られるが、米国からとなるといったん液化して、専用船で運び、陸揚げしたうえで気化するという手順を踏まざるを得ない。

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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 1957年千葉県生れ。日本経済新聞社特任編集委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスター。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員などを経て現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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