「エコノミックガーデニング」で地方経済のレジリエンスを高める

執筆者:山本尚史 2022年5月15日
カテゴリ: 経済・ビジネス
エリア: アジア
さんむエコノミックガーデニング推進協議会のHPより
コロナ禍で打撃を受けた地方経済が再生し、しなやかな強さを備えて行くためには、大企業誘致を軸にする発想から脱却することが必要だ。地元中小企業が繁栄し長生きするビジネス環境をテーラーメイドで作る「エコノミックガーデニング」アプローチで先行した地方自治体の取り組みを紹介する。

雇用創出効果が大きい「中小企業の成長」

 コロナ禍は、飲食や旅客サービスにおける需要の喪失やサプライチェーンの機能不調による供給の減少などを招き、経済全体に衝撃を与えた。さらに、国際紛争により燃料や原材料が値上がりし、円安と相まって、不況とインフレーションが同時に進行することが懸念されている。このために経済基盤が相対的に脆弱な地方都市が大きな影響を被ると考えられる。

 地方都市が経済基盤を強化する場合には企業誘致を志向しがちであるが、今後、地方都市に産業団地を整備しても、進出してくるのは労働集約的な製造業の工場ではなく、配送センター、データセンター、自動化された機械で製造する無人工場などであろう。あるいは、地域内に既に立地している企業が、設備の更新や生産規模の拡大を契機として、より有利な立地条件を求めて産業団地に移設してくるだろう。このような企業誘致は、正規雇用の創出に大きく貢献することはないし、工場労働者に関連する飲食業やサービス産業の繁栄につながりにくい。

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執筆者プロフィール
山本尚史(やまもとたかし) 拓殖大学政経学部教授。研究テーマは、地域経済イノベーション戦略、経済レジリエンス政策など。筑波大学卒業後、プリンストン大学で公共政策学修士号、ハワイ大学で経済学博士号を取得。総務省地域力創造アドバイザーなどを兼務、地方自治体や経済団体への助言を行う。著書に『地方経済を救うエコノミックガーデニング』『高度付加価値社会宣言』。
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