「陸上養殖」という漁業の未来:「獲る」から「育てる」、そして「陸(おか)で育てる」

執筆者:町田徹 2023年2月24日
タグ: 脱炭素 日本
エリア: アジア
全国で新規参入が相次ぐ[大分県佐伯市で陸上養殖されるヒラメ](C)時事/JFおおいた提供
世界的な水産資源争奪戦が本格化するなか、日本の水産業は活路を探しあぐねている。「獲る」漁業を代替してきた海面養殖には環境面での課題が浮上、食料安全保障の観点からも新たな取り組みが期待される。今、その有望株として脚光を浴びているのが、陸上のプラントでサカナを育てて出荷する「陸上養殖」だ。

   漁獲減少や地球温暖化による海の水質変化、地方の衰退、そして食料安全保障の確立といった水産業の懸案が山積する令和の日本にあって、「陸上養殖」に新たな可能性が開けてきた。

   三菱商事・マルハニチロの企業連合は回転寿司で人気があるサーモンの一種、アトランティック・サーモンの陸上養殖に乗り出す。昨年10月、富山県入善町に三菱商事が51%、マルハニチロが49%を出資する合弁会社「アトランド」を設立。総事業費110億円を投入、2025年から生産を開始する。ニッスイと日揮はそれぞれ、生食も可能な“アニサキス・フリー”のマサバの陸上養殖を始める。小規模だが、海のない群馬県、埼玉県を舞台にした事例も珍しくない。

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執筆者プロフィール
町田徹(まちだてつ) 1960年大阪生まれ。経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業後、日本経済新聞社に入社。米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。雑誌編集者を経て独立。「日興コーディアル証券『封印されたスキャンダル』」(『月刊現代』2006年2月号)で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」大賞を受賞。著書に『電力と震災 東北「復興」電力物語』『行人坂の魔物 みずほ銀行とハゲタカ・ファンドに取り憑いた「呪縛」』などがある。2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。2019年~、吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員。
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