「権威主義的政権の平均」に逆戻りした中国のデフレ
Foresight World Watcher's 6Tips
今週もお疲れ様でした。
「中国当局が国内の著名なエコミストらに対し、デフレのようなネガティブなトレンドについての議論を避けるよう圧力を掛けている」と英FT紙。中国の様々な景気指標は明らかなデフレ傾向を示していますが、「しかし、経済の常識的なシナリオが当てはまるかは習近平政権の出方次第」という点でも多くのエコノミストの意見は一致します。
そもそも、ありうべき成長トレンドを逆転させたのが習近平体制の経済改革だと指摘するのは、米ピーターソン国際経済研究所のアダム・S・ポーゼン。米FA誌に寄せた論稿では、経済運営の不透明化が国民にリスク回避を意識させ、投資や支出が減るという、独裁的な政権の罠に中国がはまったことを指摘します。
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Can China escape deflation?【Economist/8月9日付】
Chinese economists told not to be negative as rebound falters【Sun Yu/Financial Times/8月6日付】
「過去2年にわたって世界の大半の経済大国の政策立案者たちは、耐えがたいスタグフレーションのジレンマに直面してきた。彼らが同時に戦ってきたのは、高金利を要求する高インフレと、通常であれば金融緩和が必要となる景気後退の懸念だ」
「例外は中国だ。現在、成長の鈍化と危険なほど低いインフレ率の両方に苦しんでいる。この状況はスタグフレーションではなくスタグネーション[景気低迷]だ。直近の統計によると、7月の消費者物価は前年同月比で0.3%下落した。政府関係者はすぐに理由として不安定な食品価格を挙げた。しかし、デフレ圧力はもっと広範囲に及ぶものだ。輸出業者や食品以外の生産者の請求する価格は暴落している」
中国経済への懸念がいっそう強まってきた。ゼロコロナ政策の余波や不動産バブルの崩壊、主要輸出先の景気低迷など、すでにさまざまな要因がマイナス材料として浮上してきていた。だが、いま冒頭部分を引用した英エコノミスト誌の「中国はデフレを逃れられるか?」(8月9日付)にあるとおり、今回注目を集めているのは中国のデフレ傾向だ。
その深刻さは、英フィナンシャル・タイムズ紙の記事の次のような一節からも明確にうかがえる。
「世界第2位の経済大国の弱い景気回復を北京が加速できるか否かについての懸念が高まるなか、中国当局が国内の著名なエコミストらに対し、デフレのようなネガティブなトレンドについての議論を避けるよう圧力を掛けている」
「国内証券会社のアナリストや一流大学および国営シンクタンクの研究者らによると、彼らは規制当局や所属組織、さらには国内メディアから、資本逃避から物価の軟化に至るテーマについて否定的な発言をしないよう、申し渡されているという」
デフレが進んでいる状況を「インフレは落ち着いている」などとエコノミストが言い換えざるをえない状況は、バブル崩壊後の金融危機が深刻化していた1990年代後半の日本を通り越して、……
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