【Analysis】アルゼンチン・ミレイ新大統領の「ミッション・インポッシブル」に夢見る投資家

[ロンドン発/ロイター]12月10日に就任したミレイ大統領は、債務不履行の常習犯でありながら南アメリカ第2の経済をもつアルゼンチンにショック療法を施そうとしている。手始めは、通貨ペソを対ドルで54%切り下げることと大幅な歳出削減だ。
11月の決選投票でミレイが勝利して以降の投資家心理を反映するように、アルゼンチン国債は12月はじめ25%上昇、決選投票の時点と比べると40%も上昇した。
IMF(国際通貨基金)は、ミレイの計画は近年のアルゼンチンの挫折からの「大胆な第一歩」だとして歓迎している。IMFからの440億ドルの融資がアルゼンチン経済の崩壊を食い止めてきた。経済を軌道に乗せるため、IMFは「急いで」仕事をすると約束しており、これはミレイの耳にやさしく響く。なぜなら1月には、アルゼンチンは20億ドル近くをIMFに返済しなければならないからだ。
エイゴン・アセット・マネジメントで新興国債券部門を率いるジェフ・グリルズは、これまでのところ新政権は「正しい選択」をして、必要な発信を続けてきたと評価する。
税制改革と輸出促進に資本規制を組み合わせて、ミレイが目標とするのは、アルゼンチンの枯渇した外貨準備を立て直し、さまざまな支払いができるようにすることだ。支払いの中には、2025年半ばまでに償還しなければならない137億ドルのグローバル債がある。このうち最初の支払いである15億4000万ドルの償還期限は1月にやってくる。
「これは政治的選択ではない。必要に迫られての選択だ」と語るのは、ヘッジファンド「マンガート・アドバイザーズ」のリスクマネジメント責任者であるリッカールド・グラッシーだ。同社は2020年の債務再編に関与し、現在もアルゼンチン債を保有している。
もしもすべてミレイの思惑通りに進むならば、より健全になったアルゼンチンは2025年頃、世界市場からの借入が「ある程度」できるようになる可能性があるとグラッシーは言う。さもなければ、債券保有者はさらなる債務免除を求められることになる。
「支援を求めれば求めるほど、アルゼンチンが世界の金融市場にアクセスできない期間が長くなる」。一定規模の国が普通に機能するには金融市場へのアクセスは欠かせないと、グラッシーは言う。
通貨の大幅切り下げは奏功するか
疲弊した投資家たちが希望を抱いたことは前にもあった。……

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