イギリス新首相スターマー氏「明るい暗さ」の中の船出
Foresight World Watcher's 7Tips
4日に投開票が行われたイギリス総選挙は労働党が14年ぶりに政権を奪還、6割を超える議席数を獲得した圧勝は97年からのブレア政権発足時を想起させるものでした。ただ、キア・スターマー新首相の抱える課題はトニー・ブレア元首相のそれよりもずっと困難だと多くの記事が指摘します。悪化した財政、貿易やサプライチェーンにおけるブレグジットの負の影響、年間で150万人以上の患者が12時間以上待たされるという国民医療制度(NHS)、そして移民問題はナイジェル・ファラージのリフォームUKが保守党の票を奪ったようにポピュリズムの伸長と結びつきます。
「スターマーの使命は、バラバラになったものを再びひとつにまとめることから始まる」とは、英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙の名物政治記者だった(現在は寄稿編集者)フィリップ・スティーブンスの見立てです。
このほか、改革派のマスード・ペゼシュキアン元保健相が新大統領に当選したイラン関連記事などフォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事7本、皆様もよろしければご一緒に。
***
世界の動きを読み解くにはスケジュールの把握が欠かせない――というのは、「Foresight」創刊以来の基本姿勢のひとつ。そして、今年7月の前半は、あらかじめ決まっている日程が世界を動かす実例が目白押しとなっている。
重要なスケジュールのひとつは選挙だ。英国の総選挙では政権交代が実現し、イランの大統領選(前大統領の事故死は突発事だったが)では決選投票で改革派が当選、フランス総選挙の決戦投票もまた、開票結果が国や地域の行く末を大きく左右する事態になっている(東京都知事選もそうした選挙のひとつだろう)。
How Starmer can succeed【Philip Stephens/Financial Times/7月6日付】
「選挙の激震は政治革命を引き起こす。1945年にクレメント・アトリーがウィンストン・チャーチルに圧勝したことが、英国の福祉国家の誕生につながった。1983年にマーガレット・サッチャーが他の政党の合計を144議席も上回る大差で勝利したことが、企業国有化の波を後退させる反革命の到来を告げた。サー・トニー・ブレアが1997年に大勝し、その後3期にわたって続く政権を獲得したことが、保守党政権の間をつなぐ一時的な間奏曲という労働党政権の歴史的役割を覆した」
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。