「ハリス大統領のアメリカ」は自国を謙虚に「格下げ」する?

Foresight World Watcher's 6Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年8月23日
エリア: 北米
ハリス米副大統領(右)の国家安全保障顧問であるゴードン氏は熱烈な大西洋主義者として知られる[第9回米州サミットでカリブ海諸国首脳と会談するハリス氏とゴードン氏=2022年6月9日、アメリカ・ロサンゼルス](C)AFP=時事

 

 今週もお疲れ様でした。著書『仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント』(NTT出版)が日本でも話題を集めたアン=マリー・スローター氏が、英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙にカマラ・ハリス米副大統領の外交スタンスについてエッセイを寄せていました(「What might a Harris foreign policy look like?」8月4日付)。

「ハリス氏は筋金入りの国際主義者であり、アメリカの『グローバルなリーダーシップはアメリカ国民に直接的な利益をもたらす』と強調する。同時に、彼女がキャリアを通じて国内問題に重点を置いてきたこと、カリフォルニア州で気候変動の影響を経験したこと、副大統領在任中に移民危機に関与したことなどから、彼女は世界の脅威を統合的にとらえる傾向があるはずだ」

 本当の多様性実現によって強くなった社会こそが人々を幸せにすると上記著作でも伝えるスローター氏は、ハリス氏の“目配りの良さ”を高く評価するようです。その目配り(エッセイの別の箇所では「バイデン氏とハリス氏はマキャベリ流に心を硬化させることはしないと決意している」とも表現されます)こそが米国の分断を克服して、国際社会にも善き力と正義を広めて行く。

 それは確かに「ハリス大統領のアメリカ」が秘める大きな可能性と思われます。ただ、その目配りは、むしろリーダーシップへの懸念に結びつけて語られることも少なくありません。「確固たる信念と指針となる優先事項がなければ、大統領は容易に方向性を失う」(英「エコノミスト」誌)というあたりは、現状のハリス氏に対する評価の代表例と言えそうです。

 また、米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌コラムニストのマイケル・ハーシュ氏はハリス副大統領の国家安全保障顧問であるフィリップ・ゴードン氏および副顧問のレベッカ・リスナー氏の著書から「ハリス政権」の外交スタンスにアプローチするのですが、ここで浮かび上がってくる米国の姿はバイデン・ハリスチームがかねて口にする「世界にとって不可欠で強力な米国」とだいぶ違うところが興味深い。世界システムへのコミットを最小限に止めながら米国の繁栄を維持することがハリス外交の基本線になると見るハーシュ氏の論考は、以下で詳細をお伝えします。

  フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事6本、皆様もよろしければご一緒に。

Kamala Harris can beat Donald Trump. But how would she govern?【Economist/8月22日付】

カマラ・ハリスはドナルド・トランプに勝てる。だが、彼女の統治はどのようなものになるのだろう?

 これは英「エコノミスト」誌が8月22日付(雑誌版は24日付)に公開した記事のタイトルだ。ハリス米副大統領が民主党大会で大統領選の候補者として正式に選出されたことを受けたものだ。大会は大変な盛り上がりを見せ、世論調査ではハリスがドナルド・トランプ前大統領を上回ることも珍しくない。これを朗報としつつ、記事はハリスが当選した場合の具体像がまだ見えてこないことを指摘する。

「彼女が自身のキャンペーンを[政策ではなく]個性中心に展開するのには理由がある。[中略]トランプ氏が[中略]対立候補である以上、注目を集めるのは[政策より]個性だ。しかし、心配なことに、彼女の戦術はより根本的な何かを示唆しているのかもしれない」
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カテゴリ: 政治
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