最大のゲノムを持つ動物は不思議な「生きた化石魚」

2024年9月23日
タグ: 野生生物
ミナミアメリカハイギョ(学名Lepidosiren paradoxa)。ゲノムの巨大化は、塩基配列の繰り返しを抑制するメカニズムが減少していることと関連しているという[2024年3月18日、アメリカ・ルイジアナ州バトンルージュのルイジアナ州立大学の研究室にて撮影](C)Katherine Seghers, Louisiana State University/REUTERS
動物界最大のゲノムの記録が更新された。その動物の正体は、南米に棲むミナミアメリカハイギョ。ブラジル、アルゼンチン、ペルー、コロンビア、ベネズエラ、仏領ギアナ、パラグアイの水がゆっくり流れる水域や水が停滞する水域に生息する。「生きた化石」とも呼ばれ、現存の動物のうち、水中から陸上に初めて進出した脊椎動物に最も近縁だ。4億年以上前に生きた原始的なハイギョとも姿がよく似ている。

[ワシントン発/ロイター]ミナミアメリカハイギョ(学名 Lepidosiren paradoxa)のゲノムを解析した結果、ヒトゲノムの約30倍大きいことが明らかになった。この研究は、8月14日に学術誌「Nature」で発表された。

 ゲノムとは、生物が持つすべての遺伝情報のことを指す。ゲノムの大きさは、生物の細胞核内にある塩基対(DNAの主要な構成要素)の数で測った。ミナミアメリカハイギョの細胞に含まれるDNAを糸玉のように伸ばした場合、長さは約60メートルにも及ぶ。対してヒトゲノムでは、2メートルほどにしかならない。

「ミナミアメリカハイギョのゲノムは過去1億年の間に巨大化したことが明らかになった。1000万年ごとに、ヒトゲノム1つ分増大したことになる」とルイジアナ州立大学の進化生物学者で、論文の共著者のイゴール・シュナイダー氏は述べた。同氏によると、ミナミアメリカハイギョの19本の染色体のうち18本は、いずれもヒトゲノム全体よりも多くの塩基対を持つ。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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