
「諸条件が整えば10月27日に解散・総選挙を行いたい」(9月30日)
9月27日の自民党総裁選における劇的な勝利の余韻に浸る間もなく、石破茂は党役員人事や閣僚人事に着手した。さらに衆議院の解散・総選挙の日程にも言及した。冒頭の発言は国会で首班指名を受ける前日、石破が指名した自民党4役(幹事長・総務会長・政調会長・選挙対策委員長)との共同記者会見でのものだ。
「諸条件が整えば」と一応の留保はつけているものの、就任前に総理の「専権事項」とされる解散権に言及したことが波紋を呼んだ。また、別の意味でこの発言を問題視する声が広がっている。
「誰が総裁になるにせよ、新体制ができれば、審判を仰ぐ時期は、本会議あるいは予算委員会の議論の場を通じて、なるべく早い時期に行われるべきだという風に考えている」(8月24日)
これは石破が地元の鳥取県で総裁選への出馬表明をした会見での発言だ。
「国民に判断してもらえる材料を可能な限り提供する」として国会での与野党論議を積極的に進めていく考えを強調していた。関係者によれば総裁選に出馬を表明した頃の石破は、自分が総理になった場合は衆参の予算委員会の場で野党との論戦を経た上で、「裏金問題のケジメ」を一つの争点に衆議院を解散するハラであったという。
この場合、想定された日程は10月27日ではなく、2週間後の11月10日だった。27日投開票となれば予算委員会での論戦は事実上不可能だ。総裁選で言ってきたことを反故にしていると野党側は強く反発している。
立憲民主党・野田佳彦代表「もっと堂々と議論に向き合うタイプの政治家と思っていたが、とっとと逃げてしまうことに対して深い失望を覚えている」(10月1日)
「2週間あれば立憲の野田さんとの討論も十分できるのに、なぜ石破さんは27日投票にこだわるのか」(自民党関係者)
“森山内閣”と言われかねない
こうした政治日程を演出しているのは石破ではなく、1人の「キーパーソン」の影響が大きいと筆者は見ている。その人物とは自民党幹事長に就任した森山裕だ。今回の総裁選、一回目の投票で石破は154票(議員票46、党員票108)を取ったが、高市早苗の181票(議員票72、党員票109)に及ばす2位となった。しかし、決選投票で石破は215票を獲得して高市に21票差で逆転勝利し、第28代自民党総裁の椅子を手に入れた。逆転勝利の要因としては高市政権をよしとしない岸田文雄前総理や菅義偉元総理らの勢力がこぞって石破に入れたことがあげられるが、その両者のパイプ役となったのが森山だったのだ。
また、政界関係者によれば「10月27日投開票」説が流布し出したのは総裁選投開票日の前夜からで、その出所を探ってみると森山周辺が発信源だったというのだ。そして総裁に決まった翌28日の土曜日、石破は早速、森山に幹事長就任を要請した。これにより衆院の解散総選挙の日程はほぼ決まったというのが真相だ。
また国会における野党側との折衝を担う「要のポスト」である国会対策委員長には、森山が可愛がっている旧森山派の坂本哲志前農水大臣が就任した。
「子分の坂本さんが国対委員長になったことで、森山さんは選挙(対策)と党人事、国会対策まで一手に担う権限を与えられたようなものだ。“森山内閣”と言われかねない勢いだ」(自民党関係者)
なぜ石破はそこまで森山に依存しているのだろうか。

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