成功者と犯罪者が紙一重の時代

執筆者:喜文康隆 2000年9月号
タグ: 日本

 あっけない幕切れだった。八月二十八日、東京地検特捜部はクレアモントキャピタルホールディング社長の古倉義彦を逮捕した。みずからが大株主である大正生命から「有利な投資先を斡旋する」と称して八十五億円をだましとった疑いである。この三年ばかり、「兜町の風雲児」「若きM&A王」「第二の孫正義」などともてはやされていた男の「フェイク(偽もの)の地肌」は、瞬く間に露わになった。 兜町(シマ)は「成り上がり」の街である。忘れた頃に唐突に“風雲児”が登場、「理外の理」のドラマを演じたのち、やがてフェイクとして相場の闇に消えていく。時として、かれらの毒があまりにも強すぎると、国家権力や既成勢力がよってたかって犯罪者に仕立て上げる。そして、「相場の世界で最後まで生き残る人間はいない」というシマの教訓だけが後に残る。この二十年間でも、誠備グループの加藤あきら、投資ジャーナルの中江滋樹、そして光進グループの小谷光浩など、いずれもマスコミに“風雲児”ともてはやされた面々が、犯罪者として歴史のかなたに消えていった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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