恥をかかされても煮え切らないロシアの対北政策

名越健郎
執筆者:名越健郎 2006年8月号
カテゴリ: 国際
エリア: ロシア 朝鮮半島

[モスクワ発]北朝鮮のテポドンなど弾道ミサイル七連発に、ロシアのプーチン政権は内心激怒したはずだ。七月十五日からのサンクトペテルブルク・サミット(主要国首脳会議)を前に難題を突きつけられた上、ロシアの自制要請を無視し、よりによってロシア近海に落下させたからだ。 政権に近い政治学者のグレブ・パブロフスキー氏は「金正日労働党総書記には、もうロシアの鉄道旅行はさせない。一定の制裁が必要だ」と述べた。ロシア外務省の非難声明も、従来にない厳しい内容だった。極東では北朝鮮への反発が広がっており、世論を外交に反映させないプーチン政権も、次第に対北政策を変えざるを得ないだろう。中国との「役割分担」の弱み 今回のテポドン騒動で最も恥をさらした国はロシアだった。露コメルサント紙によれば、ロシア国防省と参謀本部はインターネットの情報でミサイル発射の事実を知ったという。軍は発射や航跡を特定できず、落下地点も確認できなかった。ロシア軍高官はロシア新聞で「発射をうっかり見逃した」ことを認めた。日米両国に比べて、ミサイル探知能力が大幅に劣るという国家機密が暴露された。 もともと軍事専門家はロシアの極東方面でのミサイル探知能力は低いとみていた。「ロシアが探知できるのは米国領内だけで、アジア太平洋では衛星システムでの常時のミサイル探知能力はない」(コメルサント紙)。イワノフ国防相は全面否定したが、ロシア人記者らは「米軍が極東方面から核攻撃すれば、ロシア軍はそれをネット情報で知る」などと痛烈に皮肉っている。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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