中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(30)

安倍中東歴訪で考える「日本の活路」の見出し方

池内恵
執筆者:池内恵 2007年6月号
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 日本

 安倍首相は四月二十六、二十七日の訪米の後、二十八日から五月二日にかけて湾岸諸国とエジプトを歴訪した。五日間をかけ、百七十人を超える財界使節団を随行させて、湾岸協力会議(GCC)六カ国のうち四カ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール)とエジプトを巡った今回の訪問は、それ自体で何か大きな変化をもたらすような、目覚しい成果を挙げたわけではない。しかし今後の動き次第では、日本が中東に積極的に関与する重要なステップとして評価されることになるかもしれない。あくまでも今後の更なる努力次第、という点は強調される必要があるが、せっかくの萌芽的な努力を、一概に退けてしまってはならないだろう。 中東の場合、政治外交であれ経済関係であれ、要所でトップが出て行くことは極めて重要である。アラブ首長国連邦とカタールには一九七八年の福田赳夫首相以来初の首相訪問、クウェートは首相の初訪問であり、これまで軽視しすぎてきた。 政官のエリートが中東での経験を有し識見とコネクションを備えていることが稀でない欧米との乖離は、そう簡単に埋められない。日本と中東の間には特有の「食い合わせの悪さ」のようなものがあって、それが随所で関係を阻害してきたのかもしれない。意思決定や企業文化の違いや、そもそもの相互の社会が相手に求める根本的なニーズの食い違いから、関係は自ずと限定されてきた。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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