中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(35)

情報リークが謎を深めたイスラエルのシリア攻撃

池内恵
執筆者:池内恵 2007年11月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 九月六日の謎めいた事件が今もなお尾を引いている。この日の朝、イスラエル空軍機がシリアの領空を侵犯、なんらかの攻撃を行なって去っていった。明らかな事実はこれだけである。ここに憶測が加わり、諜報情報のリークが断続的になされ、ホワイトハウス内の政治闘争の重要課題にもなりかけている。 イスラエルによるシリアへの攻撃というのは、それだけで大問題に発展しかねない事件である。イスラエルとシリアは、イスラエルが一九六七年以来占領しているゴラン高原をめぐって争っており、戦争状態は終結していない。最近もゴラン高原を挟んで相互に部隊の動きや兵力増強をめぐって緊張の高まりがあった。 しかし今回の攻撃はまったく正反対の、シリア・トルコ国境付近で行なわれている。イスラエル軍機がシリアの背後の奥深くを衝き、トルコの領空も侵犯していったことになる。イスラエルとシリアとの全面的な戦争につながりかねない危険な事件であると同時に、あまりに大胆すぎてあっけにとられるような行動である。よほどの重大な目標があったと推測されるのは当然だろう。 だが、イスラエル政府は沈黙を続けた。イスラエル政府が攻撃を行なった事実を公式に認めたのは十月二日になってからである。その際も詳細には一切言及していない。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順