中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(51)

中東への「言葉」に成功したオバマを待つ決断の困難

池内恵
執筆者:池内恵 2009年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米

 オバマ米政権は発足直後に、中東和平担当にミッチェル特使を、アフガニスタン・パキスタン問題にはホルブルック特使を任命し、イスラエルのオルメルト首相、パレスチナ自治政府のアッバース大統領に電話をかけ、キューバ・グアンタナモ基地の「敵性戦闘員」の収容施設を一年以内に閉鎖するよう命じる大統領令に署名するなど、中東政策の変化を示す象徴的な施策を次々に行なった。就任演説では「ムスリム(イスラーム教徒)世界には、互いの利益と互いへの尊敬にもとづいた新しい道を求める」と呼びかけた。「尊敬」こそがブッシュ前政権時代に中東に対して欠けていたものだ。 オバマ大統領として最初の単独テレビ会見は、サウジアラビア資本のアラビア語国際ニュース局「アラビーヤ」に対して行なった。アラビア語国際ニュース局で最も影響力のある「ジャジーラ」が民族主義・反米感情的な報道姿勢で人気を集めるのに対して、「アラビーヤ」は国際協調・リベラル路線を打ち出して対抗軸となろうとしている。オバマ政権が中東の現実に関する適切な判断能力を持つスタッフに支えられていることを示す的確な選択だろう。 もちろん、各国の多くの論評が指摘しているように、中東問題に関するオバマ大統領の「言葉」の適切さは評価できるものの、本当に必要なのは「行動」であり、近い将来に困難な情勢を見極めた決断が迫られてくる。オバマ政権を待ち構える中東情勢を概観してみよう。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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