国際論壇レビュー
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2つに割れた「ウィキリークス」への評価

会田弘継
執筆者:会田弘継 2010年12月20日
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾 北米

「これは外交の9・11だ!」。イタリアのフラティーニ外相は、思わずそう口走った。内部告発サイト「ウィキリークス」による米外交公電の一斉暴露は、世界に大きな衝撃を与えた。公電25万件以上が内部告発者からウィキリークスの手に渡り、米紙「ニューヨーク・タイムズ」、英紙「ガーディアン」など欧米有力5メディアとの連携で、11月28日から順次暴露されだした。そしていまも続いている。

明かされた米外交の「裏側」

 ウィキリークスが入手したのは、1966年12月末から今年2月末までの期間の251,287件の米外交公電。274在外公館とのやりとりで、うち15,652件が「シークレット(極秘)」とされている。これらを暴露することで「アメリカの表向きの仮面と、密室の中で言っていることの矛盾」を暴き出すのだという。 【Secret US Embassy Cables, Cablegate, Wikileaks homepage】
 これほど大量の極秘外交公電、しかもごく最近のものが暴露された例はない。外交を司る立場から見れば、まさに9・11テロのような衝撃だ。だが、一般市民の立場からすると、アメリカを軸にした世界外交の動きの裏側をのぞき見る、またとない機会となった。ジャーナリストで情報公開活動家でもあるヘザー・ブルックは、ウィキリークスと連携する「ガーディアン」紙への寄稿で「これは革命だ。すべての革命は恐怖と不安を生む。われわれは新情報啓蒙時代に向かおうとしているのか。それとも、何がなんでも統制を維持しようとする者たちによる反撃が、われわれを新たな全体主義に向かわせるのか」と問いかける。【Wikileaks: the revolution has begun-and it will be digitised, The Guardian, Nov. 29】
 果たして、そういうことなのか。本稿で検証するテーマのひとつだ。だが、その前に、ウィキリークスが暴露した米外交の「密室の中」をのぞいて見よう。
 尖閣諸島での中国漁船衝突事件、北朝鮮の韓国・延坪島砲撃、民主活動家劉暁波氏のノーベル平和賞受賞と中国政府の対応……この数カ月揺れ動いた東アジア情勢の中で、日本人が注目したのは当然、中国・朝鮮半島をめぐる米極秘公電だ。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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