本当は恐ろしいかもしれない“かわいいお爺ちゃん”を選んだインドネシア、その複雑な民主主義

Foresight World Watcher's 6Tips

インドネシア人有権者の過半を占めるのは40歳以下、多くは旧独裁政権時代の流血を知らない[大統領選で当選を確実にしたプラボウォ国防相(左)と副大統領候補のギブラン氏が準備した選挙用AIアバター=ギブラン氏のSNSから](C)時事

 今週もお疲れ様でした。ロシアの反体制派、アレクセイ・ナワリヌイ氏が収監中の刑務所で死亡するというニュースが伝わりました。ロシア大統領選まで1カ月、プーチン政権の残忍さを見ずにはいられない衝撃的な事件です。十数回の実刑判決を受け、暗殺で命を落とす寸前まで追い込まれながらも体制批判を続けたナワリヌイ氏の死に対し、欧米メディアは深い哀悼の意を示しています。

 ただ、ナワリヌイ氏については生前から、パワーを倒すためのパワーを求めて「有害なナショナリズム」に近寄ったとの指摘もあります。「思想家」であるよりも「活動家」であることを選び続けたと言うべきか(ナワリヌイ氏の政治活動は株式投資を通じて企業の腐敗を意識したことで始まります。つまり物言う株主=アクティビストが出発点です)、こうした評価の分かれる部分も含めて米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌は足跡を丹念に辿っています(「Alexei Navalny Wanted to Make Russia a ‘Normal Country’」2月16日付)。

 また先日来、米保守系テレビFOXニュースの元キャスターでドナルド・トランプ氏に非常に近い人物として知られるタッカー・カールソン氏がウラジーミル・プーチン露大統領に行った“お手盛りインタビュー”が話題を集めていますが、ナワリヌイ氏の死はアメリカの反トランプ論にも格好の糸口を与えるでしょう。米ニューヨークタイムズ紙は、このインタビューに対する新たな批判が起きていることを伝えています(「Tucker Carlson’s Lesson in the Perils of Giving Airtime to an Autocrat」2月16日付)。

 以上、昨夜遅くのニュースを取り急ぎカバーしましたが、今週はインドネシア大統領選が行われ、この週末は今後のウクライナ支援の行方を見通す上でも無視できない重要イベントのミュンヘン安全保障会議(MSC)が開催されます。以下、こうしたテーマを中心に、フォーサイト編集部が熟読したい記事をピックアップしました。

 皆様もよろしければご一緒に。

[SITUATION REPORT]Anxious World Leaders Descend on Munich【Robbie Gramer, Jack Detsch/Foreign Policy/2月15日付】

「われわれの勘定では、この週末には世界中から28人の政府首脳、56人の外務大臣、20人の国防相、36人のインテリジェンス機関トップが集まり、その他にも数百人の高官や企業幹部がいる。言うまでもなく、ニュース満載の週末になる」
「米国からはカマラ・ハリス副大統領とアントニー・ブリンケン国務長官が代表団を率いて乗り込む。そのほか、中国外交政策トップの王毅、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン・アルサウード外相、インドのS・ジャイシャンカール外相、英秘密情報部(MI6)長官のリチャード・ムーア卿、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、NATO[北大西洋条約機構]のイェンス・ストルテンベルグ事務総長、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、そして米国の上院議員や下院議員のグループなどが出席する予定だ」
「ビッグ・ネームたち――その全員が今週、ミュンヘンに参集する」

 ややショーアップ気味に多くの名を書き連ねるのは、フォーリン・ポリシー誌の旗艦ニューズレター、「シチュエーション・リポート」の2月15日号(筆者は同誌記者のロビー・グレイマーとジャック・ディッチ)。「不安な世界のリーダーたちがミュンヘンに集結」と題された最新号のテーマは16~18日に開かれるミュンヘン安全保障会議(MSC)だ。……

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top