中東―危機の震源を読む (62)

アメリカの知的システムの強さと陥穽

執筆者:池内恵 2010年2月号
エリア: 中東 北米

 三カ月のワシントンDC滞在を終えて帰国した。ワシントンは政治・外交に特化した街で、人に会うにも、様々な催しに参加するにも、時間のロスがない。一年ぐらい滞在した気分である。アメリカはしばしばその「光と影」を論じられるように、燦然と輝く部分と、深く暗い闇の落差が激しい。滞在中に改革法案が上下両院で通過した医療保険制度などは影の面の最たるものだ。 研究・教育にしても、米国は独特の落差を抱え込んでいる。昨年十二月号の本連載で報告したように、ワシントンに集まる政治・外交シンクタンクや財団、大学の研究所に集まってくる国際政治・外交の情報量は著しく、議論の展開も早い。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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