東電賠償スキームに関する嘘(その2)

執筆者:原英史 2011年5月17日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

東電賠償スキームについては、その後、国会での議論もなされている(13日参議院予算委員会、16日衆議院予算委員会など)。
 
前回エントリーで指摘した「嘘」が早くも明白になった例もあるので、続報をお届けしておきたい。
 
1、銀行の債権放棄?
 
前回紹介したように、枝野官房長官は5月13日会見で、銀行が債権放棄に応じない場合に公的支援をストップする可能性に言及。債権放棄を強く求める姿勢を示していた。
 
しかし、その後、玄葉国家戦略担当大臣は、テレビ番組で「(枝野発言は)言い過ぎ」と指摘。
さらに、16日衆議院予算委員会で、塩崎恭久議員(自民)の質問に対し、海江田経産大臣は、「(東電と銀行の)民民の問題」「これが(政府の)今の考え方」と繰り返し、何度問われても「公的支援ストップ」の可能性には言及しなかった。
このやりとりは、事実上、枝野長官の発言を否定したに等しい。
 
2、電気料金の値上げ?
 
枝野長官は、前回紹介したとおり、「基本的に電力料金の値上げによらずに賠償の資金を出す」と発言していた(5月12日会見)。
だが、今回のスキーム上、新たな「機構」への負担金分(これは、東電のみならず、他地域の8社も)が電気料金に上乗せされるはずであることは、前回指摘したとおり。
 
この点、同じく塩崎議員の質問で、海江田大臣は「できるだけ電気料金を上げないよう、電力会社に血のにじむような努力をお願いし・・・料金認可でチェックしたい」といった答弁をした。
要するに、経営合理化努力により負担金分の相殺を期待という趣旨だが、もしそんなに経営合理化の余地があるとしたら、これまでしていなかったことの方がおかしい。いずれにせよ、負担金分が電気料金の上乗せになることは間違いない。
 
(なお、電気事業法19条では、「料金は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること」と書いてあって、もともと「能率的な経営」をしていないといけなかった。)
 
3、「東電の救済」?
 
5月13日参議院予算委員会では、中西健治議員(みんなの党)の質問に対し、東京電力社長が、退職金や年金のカットは検討していない旨を答弁。
6条件の一つであった「最大限の経営合理化と経費削減」について、内容が全くいい加減なまま、支援スキームの決定に至っていたことも露呈した。
 
これ以外に、社債の扱いなども、今後さらに議論がなされようが、いずれにせよ、本来責任を負うべき東電及び関係者(経営者・従業員、株主、銀行など)の負担が問われないまま、国民負担が求められようとしている状況だ。
 
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執筆者プロフィール
原英史 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。
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