イデオロギー対立で続くデフォルト危機

執筆者:足立正彦 2011年7月11日
エリア: 北米

 8月2日までに米議会で連邦政府債務の上限を引き上げるための関連法案が成立しない場合、米国債が債務不履行(デフォルト)に陥る危機に直面している。こうした中、財政再建と連邦政府債務の上限引き上げを巡る与野党協議が現在重要な局面を迎えている。7月10日は日曜日であったにもかかわらず、ホワイトハウスで基本合意に向けてオバマ政権高官と与野党議会指導者との協議が行われた。

 今年5月5日からバイデン副大統領主導で与野党協議が継続されてきた。だが、6月23日、エリック・カンター下院院内総務(ヴァージニア州第7区)とジョン・カイル共和党上院院内幹事(アリゾナ州)は民主党が財政再建策に増税を導入しようとしているとして与野党協議を急遽ボイコットした。共和党の基本的立場は、連邦政府債務の上限を引き上げる場合、ソーシャルセキュリティ(社会保障)をはじめとする社会セーフティーネット関連プログラム等も削減し、債務上限引き上げ幅と同等以上の大胆な歳出削減を行うべきというものである。また、共和党は増税にも強固反対の立場である。カンター下院院内総務らが与野党協議から離脱したことで「バイデン・グループ」と呼ばれるオバマ政権高官、与野党議会関係者による協議は6月下旬に膠着状況に陥った。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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