大阪ダブル選挙の結果は、永田町にも波紋を起こしている。
民主・自民・公明が束になって大阪維新の会に遠く及ばなかった得票結果もさることながら、「大阪都」構想が今後、国会に対応を迫る課題であることが大きい。
前原政調会長、仙谷政調会長代行など依然「大阪都」構想に否定的な見解を表明する向きもあるが、少なくとも大阪の民意を無視できないとの雰囲気が強まりつつあるようだ。
そもそも、「大阪都」構想はなぜ国会における課題になるのか。
大阪府内で住民がどれだけ「大阪都」を支持しても、国会で法律を制定ないし改正しない限り、「大阪都」は実現できないことになっているからだ。
第一に、「手続き規定」の問題。
地方自治法では、現存する自治体が統合や名称変更する場合の手続きについて、規定がおかれている。
例えば、「市町村合併」なら、地方自治法第7条などで、
関係市町村の議会の議決 → 合併協議会での協議 → 関係市町村が議会の議決を経て都道府県知事に申請 → 都道府県知事が議会の議決を経て決定(総務大臣に事前協議) → 告示
といった手続きが定められる。
また、現に発動された例はないが、「都道府県の名称変更」だったら、法律で定めないといけないことになっている(地方自治法第3条)。
ところが、「新たに都を創設する」手続きについては、定めが存在しない。
そんな事態が、もともと想定されていないからだ。
見ようによっては、「大阪都」は「大阪府」の名称変更のように映るかもしれないが、これは違う。
「大阪都」は、「府」と「市」を合体した「都」を設置し、その下に基礎自治体に相当する「特別区」(市に近いが、権限など少し異なる)を設けようとするもの。組織構造を全く変えてしまうから、名称変更とは言えない。
ちなみに、かつて、「東京府」と「東京市」を合体して「東京都」を作った際は、「東京都制」(昭和18年法律第89号)という法律を制定し、その中で、
第1条 東京都ハ法人トス・・・
附則第180条 東京府、東京市及東京市ノ区ハ之ヲ廃ス
と定めた。
「東京都」に関する法律をわざわざ一本作り、その中で「府・市から都への移行」の手続きを踏んだわけだ。
今回、「大阪都」に移行する上では、大ざっぱに2つの途がある。
●ひとつは、かつての東京都の例と同様、「大阪都法」といった法律を定めて、“大阪限定の特例措置”として手続きを踏む、
●もうひとつは、地方自治法を改正し、まず“一般ルール”として、「府県・市町村から都への移行」の手続き規定を定め、その手続きに則って大阪都を作る、
というものだ。
言うまでもなく、“一般ルール”であれば、大阪だけでなく、「中京都」や「新潟都」などにも適用の可能性が広がる。
今回の大阪が特別ケースと考えるのか、ほかの大都市にも応用可能な話と考えるのか。国会にとって考えどころのひとつだ。
第二に、実体的な問題。
自治体の改組手続きだけでなく、以下のような事項も、すべて法律で定められている。
1)特別区の位置づけ(特別区の場合は区長公選など)
2)自治体間(県/市、都/特別区など)の権限分配
3)自治体間の財源配分、財源調整
例えば、権限分配は、地方自治法での一般的な定めがおかれ、さらに、水道法、下水道法、消防組織法などの個別法令で具体的に規定される。
例えば、消防だったら、通常は「市町村消防」だが、東京都の特別区域では「都知事が管理」(消防組織法第26・27条)といったことが法律で定められるわけだ。
ここで、「大阪都」にとっての分かれ道は、
●こうした権限分配、財源配分などについて、「東京都」と横並びにするのか、
●東京都とは別に、大阪独自の制度を設けるのか。
仮に後者の途を進むとすれば、今度は国会に対して、「大阪独自の制度」をどこまで地域のイニシャティブで認めるのかどうかが問われることになる(あるいは、大阪が独自の権限分配などを求めても、国会が否定してしまうのか)。
「大阪都」構想が国会につきつける課題は、このように、単に大阪の問題を越え、大都市制度全体をどう考えるのか、「地域主権」をどう考えるのか、といったテーマに及んでいく。今後の国政レベルでの議論にも期待したい。
(原 英史)
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