二〇〇七年十二月二十三日にタイで実施された民政移管のための総選挙は、〇六年九月のクーデターによって国政の全権を掌握した国軍が進めてきた「タクシン潰し」の失敗だけではなく、国軍による政治がすでに機能しなくなったことを内外に示したように思う。 民政移管を前に国軍はダミー政党を登場させ総選挙後の政局の主導権を確保し、国軍首脳を首班とする新政権を作り上げ実質的に軍人政治を継続させるのが、タイ政治の従来の姿だ。なによりもクーデターとは、国軍主流が政権を奪取するための手段だった。だが今回、国軍はダミー政党を組織できなかったばかりか、無様にもタクシン前首相のダミー政党の活動を傍観するしかなかった。
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