【ブックハンティング】一級の経済学者が描いたアダム・スミスの知的格闘

執筆者:齊藤誠 2008年6月号

 最近は新書の多くがパンフレットになり下がってしまったが、久しぶりにすばらしい新書に出会えた。著者の堂目卓生氏になじみがない方も多いかもしれないが、英語圏の一流学術雑誌を舞台に英国古典派経済学の研究をしている一級の経済学者(大阪大学教授)である。 本書『アダム・スミス』では、碩学がアダム・スミスの『道徳感情論』と『国富論』の理論的なつながりを語っている。両書の関係を了解した読者には、自由放任主義の体系書とされている『国富論』のまったく違った姿が見えてくるであろう。 著者の筆致はあくまで平易である。たとえば、『道徳感情論』の原語タイトルがThe Theory of Moral Sentimentsと、「感情」が複数形になっていることにさりげなく触れて「さまざまな感情の相互作用」が対象となっているニュアンスを読者に的確に伝えている。

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執筆者プロフィール
齊藤誠 名古屋大学大学院経済学研究科教授。1960年名古屋市生まれ。1983年京都大学経済学部経済学科卒業、1983年住友信託銀行、1992年マサチューセッツ工科大学大学院経済学研究科経済学博士課程修了。1992年ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部、京都大学経済学部、大阪大学大学院経済学研究科、一橋大学大学院経済学研究科などを経て、2019年より現職。専門分野はマクロ経済理論、ファイナンス理論、金融理論。2001年日経・経済図書文化賞(『金融技術の考え方・使い方』、有斐閣)、2007年日本経済学会・石川賞、2008年毎日新聞社エコノミスト賞(『資産価格とマクロ経済』、日本経済新聞出版社)、2011年全国銀行学術研究振興財団・財団賞、2012年石橋湛山記念財団・石橋湛山賞(『原発危機の経済学』、日本評論社)を受賞。2014年春に紫綬褒章受章。他の著書に『競争の作法』(2010年、ちくま新書)、『父が息子に語るマクロ経済学』(2014年、勁草書房)、『震災復興の政治経済学』(2015年、日本評論社)、『経済学私小説:〈定常〉の中の豊かさ』(2016年、日経BP社)、『危機の領域』(2018年、勁草書房)など。
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