「こんな小さな町に、なぜ地下鉄があるのだろうか」――グルジアの首都トビリシで初めて地下鉄に乗った時の素朴な疑問だった。街の中心部にある地下鉄の駅の入り口は防空壕のような堅牢な造りで、親しみやすいこの国の印象とは対照的だ。 人口がわずか四百四十万人の小国グルジアは、ロシア南部に接するコーカサス地域に位置する。人口百十万のトビリシ市内の観光なら、一日もあれば事足りる。ロシアとの国境は北部に連なるコーカサス山脈で仕切られ、西部は黒海に面し、東部はアゼルバイジャン経由でカスピ海に抜けることができる。昔からロシア人、トルコ人、ペルシャ人が領土を争い、十九世紀にロシアに併合されて以来、ロシア語が公用語として定着した。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン