衆議院予算委の論戦: 「1590人の裏下り」と「再就職等監視委員会」

執筆者:原英史 2010年10月13日
カテゴリ: 政治
エリア: アジア

 

以前、このブログ(9月5日)でも紹介した「1590人の裏下り?」リストの問題が、10月12日の衆議院予算委員会で取り上げられた。
 
民主党政権になってからこの8月までに、1590人の国家公務員に対して早期退職勧奨(いわゆる肩たたき)がなされ、そのうち、勧奨を拒否したのはたった2人。民主党政権は「天下りあっせんはせず、単に退職勧奨だけしている」と説明しているが、常識的に考えて、そんなことはあり得るのか? 普通、行き先のあてなく退職勧奨されたら、多くの人は拒否するはずではないのか? 水面下での天下りあっせん(裏下り)が行われているのではないか?・・・という問題だ。
 
12日の予算委では、河野太郎議員(自民党)が「民間から登用された片山総務大臣はどう思うか」と質問したのに対し、片山大臣は「以心伝心、阿吽の呼吸のようなものがあったのでは」と答弁。事実上、「裏下り」を認めた。
民主党議員でもある予算委員長が、「“感じ”を答えるな」と異例の注意をしていたが、この答弁は、常識人なら誰でも思うことを素直に述べただけで、問題視しても仕方ない。
 
問題は、質疑でも取り上げられていたが、本来「裏下り」を取り締まるべき「再就職等監視委員会」が立ち上がっていないことだ。
「再就職等監視委員会」は、安倍内閣の下で成立した改正国家公務員法(2007年)で、違法な天下りあっせんを取り締まる機関として設置された。
ところが、法律上は設置されたが、その後ずっと、委員長も委員も一人も選任されない状態が続いている。
これは、委員長・委員の人事が「国会同意人事」になっていて、福田内閣・麻生内閣のねじれ状態下、当時野党だった民主党が「自公政権の天下り規制そのものに反対」との理由で人事案を否決し続けたためだ。
その後、政権交代後は、民主党政権は人事案の提示をせず、放置状態。
 
この結果、水面下での天下りあっせんがあるのかないのか、監視役が不在で、きちんと法令に基づいて調べることさえできなくなっている。
 
そもそも、現行法に書いてあることを、「自分たちは気に入らないから」といって行政府が執行しないというのは、本来あり得ない。
天下りに関して、この国会で菅内閣が最低限なすべきことは、委員長・委員の人事案を提示して成立させ、「根絶」に向けて僅かでも前進することだろう。
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。
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