インテリジェンス・ナウ
KGB亡命者たちの窮状がもたらす深刻な影響
米首都ワシントンの南、直線距離にして約二百キロ先にバージニア州ジェームズタウンがある。一六〇七年、イギリス人がアメリカに初めて定住した町である。入植者たちは町名に、時の国王ジェームズの名を冠した。今では「国家的史跡」に指定され、アメリカ人の心のふる里の一つとなっている。 冷戦時代末期の一九八〇年、由緒あるこの町の名前をとった非営利の財団、ジェームズタウン財団がワシントンで旗揚げされた。 出資者は反共・保守の経済人たち。同財団はシンクタンクでもあり、「情報源として有益な旧ソ連・東欧諸国からの亡命者の支援」を主要な任務に掲げた。当時は、「米中央情報局(CIA)の民間別働隊」ともみられていた。亡命後、CIAでソ連・東欧情報をデブリーフィング(情報聴取)した元ソ連国家保安委員会(KGB)要員らに職を紹介したりして、彼らの米国定住を助けてきた。筆者は八〇年代末から九〇年代初めにかけて、何度かそのオフィスに出入りして、亡命ロシア人を紹介してもらったことがある。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン