日本病とアフリカ問題

執筆者:平野克己 2011年2月19日
エリア: ヨーロッパ アジア

 昨年 The Economist に、The future of Japan: The Japan syndrome という記事が載った(2010/11/18)。日本における人口構成の急激な老齢化がその内容なのだが、「日本病」と称されると、かつての「イギリス病」や「オランダ病」が思い起こされる。

 イギリス病は British disease、オランダ病は Dutch disease の訳だったから、今回の syndrome はまだ優しい表現だろうか。
 オランダ病とは、北海油田の発見で天然ガス産出国になったオランダが、エネルギー価格が高騰した1970年代に製造業部門の後退に見舞われて経済危機に陥ったことをいう。これは、天然資源賦存がかえって経済発展を阻害してしまう現象として、その後定説化した。現在では「資源の呪い」ともいう。その命名者はやはり『エコノミスト』誌だった。
 イギリス病のほうは、「ゆりかごから墓場まで」といわれた高度な福祉制度や、基幹産業の国有化政策、強力化した労働組合などが経済活力を阻喪させた現象のことである。サッチャー政権はイギリス病からの克服を掲げて新自由主義政策を敢行した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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