海のロールスロイス「ちきゅう」が指し示す未来――造船ニッポン「最強から最高へ」の転舵 4

執筆者:船木春仁 2007年1月号

 一〇月三〇日に八戸港を出港した一隻の船が、一一月二九日午後七時四二分、アフリカ・ケニア北東沖の目的地に到着した。時速一〇ノット(約一八キロ)というゆっくりとしたスピードでインド洋を越えた。 船は、正月明けまでケニア沖にとどまり、その後はオーストラリア北西沖、同南岸沖へと移動し、二〇〇七年夏まで“アルバイト”をする。これら三海域の海底に眠る原油の埋蔵量調査をオーストラリアの資源探査会社から委託されたのだ。受託料は約一〇〇億円。総額六〇〇億円ともなった船の建造費の一部をしっかりと回収する。 独立行政法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する地球深部探査(掘削)船「ちきゅう」だ。といっても、ちきゅうは石油探査のための船ではない。日本とアメリカが中心に進める地球内部の構造や地殻内生物の解明を目的とする「統合国際深海掘削計画(IODP)」の主力船として建造された。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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