東芝「出直し新体制」を操る「最高実力者」の危険な影響力

執筆者:安西巧 2015年9月1日
タグ: 日本
エリア: アジア

 粉飾決算で経営陣の解体的刷新を迫られた東芝。だが、9月下旬に発足する新体制はクビを捻りたくなる陣容だ。体質転換の旗頭になる新社長は、旧体制で会長を務め一度は自ら辞意を固めた室町正志(65)であり、11人中7人を社外から招く取締役会の議長には、畑違いも甚だしい資生堂相談役の前田新造(68)が就くと報じられている。

 一連のトップ人事を主導したのが、不祥事の背景にある歴代社長の内紛の“元凶”と名指しされている相談役の西室泰三(79)というのだから、東芝社内に一向に「出直しムード」が広がらないのも無理はない。目先の収益にこだわる短期的視点のリストラを繰り返す一方、官邸や経済産業省と一体になって国策事業の受注獲得に血道をあげる「エレキのゼネコン」へと化した昨今の東芝を作り上げたのは、他ならぬ5代前の社長、西室その人である。12月に傘寿を迎える老人とこの会社は心中するつもりなのか――。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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