
2016年から翌年にかけて火星模擬居住実験「Mars160」に参加した村上祐資さん(40)の前に、個性派揃いのチームが現れた。まさに「過ぎたるは及ばざるが如し」という表現がピッタリな面々。
それを物語るのが、シロクマ対策を巡る以下の顛末である。ただしここで語られるクルーの姿はあくまでも村上さんの視点から捉えたものだということを、予め断っておきたい。
シロクマがデビルのような存在に
「出発前のSkype(インターネット電話)会議で、FMARS基地でシロクマが出た時のルールを決めておこうという話になったんですね。と言っても、誰もシロクマに遭遇したこともなければ、退治したこともないので、本当のところはみんな分からない。それでも調べるのは得意で、問題を棚上げにできない人たちなので、真剣な議論がはじまりました。シロクマがこういう表情や動きを見せた時は、こういう気持ちになっているらしい、こういう時は銃で撃った方がいい、と。すると、どんどん話が極端になっていき、いつしか彼らの中でシロクマがとんでもなく恐ろしいデビルのような存在になっている。僕は“そんなことないぞ~”と思いながら黙って聞いていましたが、議論を重ねれば重ねるほど常軌を逸したチームになっていった」

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