「Tポイント・Vポイント統合」を選んだ「CCC・SMBC」企業変革の未来図

執筆者:逸見光次郎 2023年7月24日
カテゴリ: 経済・ビジネス
新ポイントのロゴマークを前に、撮影に応じる太田純・三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長(左、グループCEO)と増田宗昭カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)(2023年6月13日撮影)(C)時事
CCC「Tポイント」とSMBCグループ「Vポイント」の統合は、単なるポイント経済圏の再編には収まらない。企業の顧客データを活用するマーケティング支援で有望なCCCと、キャッシュレス時代の活路をマスリテール分野に追求するSMBCのシナジーは、確かに可能性を秘めている。

 2022年10月、SMBCグループ(株式会社三井住友フィナンシャルグループ)及び三井住友カード株式会社とCCCグループ(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)及び CCCMKホールディングス株式会社 が「日本最大級の決済・ポイント経済圏の創出を目指して」として資本・業務提携に関して基本合意書を締結したと発表。今年6月にはサービスの存続名称は「Vポイント」とし、そのロゴカラーをこれまでの緑と白から、Tポイントで馴染みのある青と黄に変更すると発表した。

 この取り組みについて、共通ポイント、金融業界、GDPR(EU一般データ保護規則)の観点から考えてみる。

 
(両社プレスリリースより)

「共通ポイントの雄」だったTポイント

 Tカードは1983年、レンタルのTSUTAYA事業における会員証としてスタートした。その後、2003年に共通ポイント「Tポイント」のサービスが始まり、TカードはTポイントと一体化して世の中に普及していった。TカードはCCCが発行するだけではなく、Tポイントを導入した企業がそれぞれ発行する事も可能で、ドラッグストアのウエルシアやコクミン、ガソリンスタンドのENEOS、スーパーのマルエツ、カメラのキタムラ等では各企業のロゴが入ったデザインのTカードを発行している。

 実店舗企業と提携する形だけではなく、2012年にはYahoo! Japan(現Zホールディングス)と戦略的資本・業務提携を締結し、Yahoo! Japanは発行していた「Yahoo!ポイント」をやめて「Tポイント」に統合、一方でCCCは発行していた「T-ID」を「Yahoo! ID」に統合し、「Yahoo! ID&Tポイント」のサービスが誕生。ネット上でもTポイントを使える機会が増えた。

 Tカード自体もプラスチックの物理カードだけではなく、モバイルTカードが登場。2014年にはTカードでプリペイド型の電子マネーサービスが使える「Tマネー」を開始した。CCCはTポイントを介して集めた様々なデータを基に、加盟企業へのマーケティング支援を行い、祖業であるレンタル事業からの転換を図っていた。

 ところが提携先の各社がそれぞれ独自のマーケティング、ポイント、決済政策を展開するにあたり、CCCとの関係を見直し始めた。

 ファミリーマートは強力な提携先だったが、2019年7月に「ファミペイ」サービスをスタート、それまでのファミマTカード及びファミリーマートアプリ内でのTカード会員限定特典を終了した。同年11月にはファミペイアプリとdポイントカード、楽天ポイントカードとの連携を開始し、Tポイント以外のポイント利用を選択出来るようになった。

 そして現Zホールディングスも2018年にスタートしたQRコード決済のPayPayを優先し、2022年3月いっぱいでYahoo! Japan上でのTポイント利用を終了、同年4月以降はPayPayボーナスが付与されるようになった。CCC側もモバイルTカードでのYahoo! JapanIDを不要とし提携を解消した。

 共通ポイント市場自体、拡大の一途を遂げている。ロイヤリティ マーケティングの「Ponta」(会員数1億1305万人:23年5月末、利用可能店舗数28万店:23年4月1日)、NTTドコモのdポイント(同6320万人、同10万2224店舗:23年3月末)、楽天グループの楽天ポイント(楽天ID数1億以上、23年度)、ポイントだけではなく決済機能としてのプラットフォーマーをも市場に含むと、先のPayPayポイント(会員数5700万人:23年4月、利用可能箇所数235万カ所超:23年3月)、イオンが提供するWAONポイント(累計発行枚数9113万枚、利用可能箇所94万カ所=自販機、宅配ドライバー端末30万5000カ所含む:22年3月末)のような競合も出てきた(数値は各社IRより)。

 各社の離反と共通ポイントの競争激化の中で、2022年10月にCCCはTポイント運営会社の「Tポイント・ジャパン」、Tポイントのデータを活用したマーケティング支援を行う「CCCマーケティング」を合併させ、「CCCMKホールディングス」を発足、「Tマネー」をその傘下とし、事業の再編強化を図ってきていた。そうした中での今回の発表だ。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
逸見光次郎(へんみこうじろう) 1970年東京生まれ。学習院大学文学部史学科卒。1994年 三省堂書店入社。神田本店・成田空港店等勤務。1999年 ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス社(現 セブンネットショッピング社)立ち上げに参画。2006年 アマゾンジャパン入社。ブックスマーチャンダイザー。2007年 イオン入社。ネットスーパー事業の立ち上げと、イオングループのネット戦略構築を行う。2011年 キタムラ入社。執行役員 経営企画 オムニチャネル(人間力EC)推進担当。ローソンを経て独立。書店時代、誰もが同じ価格(本代+交通費)で本が買える世の中にしたいと、ネット書店の立ち上げに参画。その中で、日本の小売においては、リアル店舗を活用したネットサービスが有効であるとわかり、アマゾンからイオンへ。店舗利用者かつ会員重視のネットスーパーを構築し、グループ全体のネット戦略を追求する中で、よりネットを活用するには商品・接客の高い専門性が必要と感じ、カメラのキタムラに入社。約1,300の店舗網を活用し、EC関与売上419億円(宅配117億円、店受取302億円)を実現。店舗とネットの更なる融合「人間力EC」を進めた。現在は独立して小売流通企業のオムニチャネル化を支援する。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top