“もしトラ”談義では見えてこない「アメリカ・ファースト」の世界像
Foresight World Watcher's 4Tips
今週もお疲れ様でした。ドナルド・トランプ前大統領の不倫口止め料不正処理問題に有罪の評決が下りました。発覚当初は「さほどの問題ではない」との見方もあったものの、大統領選の激戦構図が鮮明化したいま、「大統領としての適格性」は人工妊娠中絶の是非とともに明らかに米国を二分する争点です。
ただ、NATO(北大西洋条約機構)脱退や極度な貿易保護主義を示唆するトランプ氏によるのと同様に、先鋭的な左派の影響力が強まる民主党によってもアメリカの内向き化が進み得るという、長期的なシナリオも忘れるわけには行きません。この点、イスラエル・ハマス衝突直後の森聡氏(慶應義塾大学法学部教授、戦略構想センター・副センター長)による『内憂外患のアメリカが直面する紛争の時代(上・下)』で議論されていますが、同じ視座に立つ米ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院(SAIS)のハル・ブランズ教授による論考もピックアップしました。
フォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事4本、皆様もよろしければご一緒に。
The Pro-Choice Movement That Could Help Joe Biden Win【Economist/5月30日付】
ドナルド・トランプ前米大統領に刑事裁判で有罪の評決が下った。大統領選での有権者の投票行動への影響についてはさまざまな見方が飛び交っているが、英「エコノミスト」誌は選挙の結果を左右する、もうひとつの無視できない要因を、雑誌版の最新6月1日号のカバーストーリーで追っている。
雑誌版6月1日号の表紙に刷り込まれた特集のキャッチコピーは、「アメリカで最もダイナミックな政治運動を見よ(Meet America’s most dynamic political movement) 」。トップ記事のタイトルは「ジョー・バイデンを勝利させるかもしれない中絶容認運動」(オンライン版5月30日付)だ。
「2年前、最高裁判所は[妊娠中絶を女性の判断に委ねる]ロー対ウェイド判決を覆し、中絶の可否を各州に委ねるという判断を下した。[不可逆だと信じられていた]権利が奪われることもあるのだ」
「この逆転劇は悲観的だが、同時にアメリカで最もダイナミックな新しい政治運動を生み出した。それは、政府が個人の決定に介入すべきではないと考える何百万人ものアメリカ人の反乱だ」
「この運動に参加するアメリカ人の多さは、2020年のブラック・ライブズ・マターや10年以上前のティー・パーティー以来であり、運動はより組織化されており目標も明確だ。[中略]何万人ものボランティアが州民投票で中絶のルールを問うために何百万もの署名を集めた。運動は、オハイオ州やカンザス州など、意外な地方ですでに成功を収めている。アメリカ人が次の大統領を選ぶのと同じ日に、最多の場合、16の州で人工妊娠中絶をめぐる住民投票が行われる可能性がある」
では、このムーブメントは大統領選にどのような影響を与えるのだろうか。
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