Weekly北朝鮮『労働新聞』 (103)

朝鮮人民軍創建77周年の祝賀訪問に「お子さま」は同行せず(2025年2月9日~2月15日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年2月17日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
北朝鮮メディアは依然としてロシア・ウクライナ戦争への自国軍派兵に全く言及していない[国防省を訪問し将校と握手を交わす金正恩国務委員長=2025年2月8日、北朝鮮・平壌](C)AFP=時事
朝鮮人民軍は2月8日に創建77年を迎え、金正恩国務委員長が国防省を祝賀訪問した。「米日韓の3国軍事同盟体制とアジア版NATOの形成」を批判し、核戦力の高度化やロシアへの支持を改めて表明。昨年は同行していた娘の姿は見られなかった。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 2月12日付は、両江(リャンガン)道の金亨稷(キムヒョンジク)郡における地方工業工場の竣工式について報じた。この竣工式は、「地方発展20×10政策」初年における20番目の成果として挙行され、これにより2024年の目標が達成されたと誇示された。昨年末までに竣工式が行われたのは平安(ピョンアン)南道の成川(ソンチョン)郡のみであり、今年1月に入ってから黄海(ファンヘ)南道の載寧(ジェリョン)郡をはじめとして地方工業工場の竣工が次々に報じられてきた。地方振興の号令を掛けた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長自身が竣工式に出席したのは、成川郡、載寧郡の2回のみであった。

 一方、今年の事業開始についても報じられ始めている。11日付は、平安北道の新義州(シニジュ)市における大規模温室農場と野菜科学研究センターの着工式について伝えた。金正恩も出席して、建設に参加する朝鮮人民軍の海軍部隊と空軍部隊、白頭(ペクトゥ)山英雄青年突撃隊を激励した。

 15日付は、金正恩出席のもと、咸鏡(ハムギョン)南道の楽園(ラグォン)郡で浅海養殖事業所の着工式が行われたことについて報じた。金正恩は、事業所とともに住宅群も建設して「世界で最も美しい漁村」にすると述べた。

 このように、『労働新聞』の第1面記事は経済優先の色彩が強い。「地方発展20×10政策」を重視する方針を鮮明にしつつ、第2次トランプ政権の誕生や流動的な韓国情勢を見極めながら兵器実験についてはやや自制している可能性も考えられる。

 9日付は、朝鮮人民軍創建77周年を迎えた8日に金正恩が国防省を「祝賀訪問」したことを伝えた。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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