Weekly北朝鮮『労働新聞』 (48)

金正恩肝いり「地方格差是正」と「南北統一放棄」の本気度(2024年1月14日~1月20日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年1月22日
エリア: アジア
祖父・金日成以来の対南方針を転換した思惑とは(『労働新聞』HPより)
金正恩国務委員長の施政演説では、平壌と地方の国内格差を是正する「地方発展20×10政策」が示された。また、長年「統一を志向する特殊な関係」とされてきた韓国との関係は「敵対的な二国家関係」と定義づけが行われた。金日成時代の「高麗民主連邦共和国」方案以来の大転換を意味するが、強硬な言葉を使いながら現状を追認しただけとも言える。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 1月16日付(全10面構成)は、前日開催の最高人民会議第14期第10回会議について8ページを使って報じ、そのうち、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の施政演説「共和国の復興発展と人民の福利増進のための当面の課題について」には5ページを割いた。2019年4月12日、2021年9月29日、2022年9月8日に続き4回目の施政演説である。金正恩は年末にも朝鮮労働党中央委員会第8期第9回全員会議(総会)拡大会議で新年の方針を示したばかりであるが、今回の施政演説では、首都平壌と地方との格差是正を目指す「地方発展20×10政策」を新たに掲げたことと、対南政策の変更に対する踏み込んだ言及が注目された。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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