
米国解放の日。ドナルド・トランプ大統領が全世界に打ち出した「相互関税」に、各国政治家、行政担当者、企業経営者そして市場参加者は蜂の巣をつついた大騒ぎになっている。予想をはるかに上回る高関税。4月2日のホワイトハウス・ローズガーデンでの発表が4月3日のマーケットを直撃した。
相互関税は相手国・地域が米国にかけている関税を、米国もかけ返すということだ。トランプ政権の発表によれば、日本は米国に対して、非関税障壁も含めて46%の関税をかけている。従って日本に対してかけ返す関税は、税率を約半分に割り引いて24%。倍返しはなく半分返しなので「温情だ」というのだが、悪い冗談はやめてくれ。24%という想定外の高関税は石破茂政権を直撃した。「除外を求める」と繰り返すが、とうてい埒が明かない。
「貿易赤字÷輸入額=相互関税率」の理屈を少し詳しく
46%はどこかで聞いた数字だ。「くっきりとした姿が浮かんできたわけではない。おぼろげながら浮かんできたんです。46%という数字が」。2021年4月23日にニュース番組に出演した小泉進次郎環境相(当時)は、30年度の温室効果ガス排出を13年度比で46%削減する政府目標について根拠を問われ、「おぼろげながら」と答えた。
今回の46%。実際の日本の平均関税率は3.7%と、米国の3.3%と並ぶ低水準。たとえ非関税障壁を加えても46%などというのは無茶苦茶だという声が木霊した。ならばトランプ政権は「おぼろげながら浮かんできた」数字を各国・地域に吹っ掛けたのだろうか。そうではない。「くっきりとした」シンプルな計算式を、米通商代表部(USTR)が示している。
USTRのHPから米国側の「相互関税の計算式(Reciprocal Tariff Calculations)」を確認しておこう。相互関税は、「米国と各貿易相手国間の二国間貿易赤字を均衡させるために必要な関税率」として計算される。その「二国間貿易収支がゼロになる相互関税」は次の①式で表される。
二国間貿易収支がゼロになる相互関税
相互関税率=(輸出-輸入)/ ( ε × φ×輸入)…①
εは輸入価格に対する輸入の弾力性
φは関税から輸入価格への転嫁
実証研究からεは4、φは0.25
なので

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