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〜国際情勢の重要人物を徹底解説!〜
中国

袁家軍
えん・かぐん、ユエン・ジアジュン

重慶市党委書記

1962年9月、吉林省通化市

北京航空学院(現北京航空航天大学)飛行機設計・応用力学学部(1980~1984年)卒業、北京航空航天大学飛行機設計専攻(2001~06年)工学博士

袁家軍は、中国の宇宙開発を主導し、そのキャリアは有人宇宙船「神舟」の発展と共に歩んだ。宇宙開発の功績が評価され、政界に進出した。

中国宇宙開発の前身は1956年、ミサイル研究のために立ち上げた「中国国防部第五研究院」にあり、宇宙開発はその後も人民解放軍と一体で進められた。

袁家軍は大学卒業後、国防部第五研究院を引き継ぎ、宇宙開発を統括した「航空航天工業省」に入省。1995年には 同省の後身の国有企業「中国航天工業総公司」で、32歳の若さで「神舟一号」プロジェクトの常務副総指揮に就いた。99年、同社が、宇宙船や発射ロケットなど宇宙開発の設計、開発、製造を一手に手掛ける国有企業「中国航天科技集団」に発展すると、袁は神舟二号から同五号までのプロジェクトの総指揮を務めた。特に2003年に打ち上げられた初の有人宇宙飛行プロジェクト「神舟五号」を成功に導いた政治的功績は大きい。

2007年に同社副総経理(副社長)を務め、12年に政界へ転出。寧夏回族自治区常務副主席を経て14年には、習近平がかつて勤務した浙江省の常務副省長、17年には省長、20年にはトップの党委書記に昇格し、出世を重ねた。副省長時代は、13年から16年まで浙江省長を務めた李強首相の下で働いた。

2022年10月の党大会で中央政治局委員に昇格し、22年12月に 重慶市党委書記に就いた。貧富の格差の大きい内陸部の重要都市・重慶市の舵取りをうまく行えるかどうかは、その後中央でどういうポストに就くかを測る「試験」と位置付けられる傾向が強まっている。

このため歴代重慶市党委書記は、将来を有望視された比較的若い指導者に任せる傾向が強まっている。しかし薄熙来と孫政才はそれぞれ、反腐敗闘争の中で2012年と17年に失脚。孫政才の後を託された陳敏爾は、習近平の最側近の一人であり、その手腕が期待されたが、5年間で目ぼしい成果を挙げられなかった。結局、22年の党大会人事では天津市党委書記への「横滑り」にとどまり、政治局常務委員に昇格できなかった。今や習近平の最側近グループから外れてしまった。

袁家軍は、軍系国有企業出身のテクノクラート「軍工系」指導者で、習近平と直接の上司・部下関係はないが、これまで同様、実務面で実績を残せば、次の党大会でさらに上を目指せる位置にいるだろう。

(執筆・監修:城山英巳

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