クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

中華人民帝国に遠慮する人々

執筆者:徳岡孝夫 2005年8月号
タグ: 中国 毛沢東 日本
エリア: アジア

 ひょっとすると一度このページに書いた話かもしれない。私のコラムは始まって十五年になるから、いわゆる「老いの繰り言」があるかもしれない。 まもなく八月十五日が来て、小泉首相は「適切な判断」のうえで靖国神社に参拝するかもしれない。マス・メディアは手に汗握っている。そういうときに、これは古い記憶の中から浮かんできた話である。 文芸評論の佐伯彰一氏が、先日の新聞に「サイゴンが陥落した日、私は北京にいた」と書いていた。私は時候の挨拶を兼ね「あの日に人民大会堂で中華料理を食べておられたとは羨ましい。私は南シナ海の米第七艦隊の旗艦上で脱水症状になり、苦労していました」と葉書を出した。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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