国際人のための日本古代史 (77)

「天皇の生前退位」を歴史の中で考える

執筆者:関裕二 2016年7月26日
タグ: 日本
エリア: アジア
7月25日、那須の御用邸へ出発される天皇、皇后両陛下(JR東京駅)(C)時事

 今上天皇の生前退位の是非をめぐって、議論が交わされ、波紋が広がっている。皇室典範に退位の規定はないが、ご高齢の天皇陛下に激務を強要するのもはばかられる……。ここは思案のしどころだ。
 様々な意見がある。皇室典範を改めれば、権力者が恣意的に運用し、退位を強要する事態も起きかねないと危惧する人たち。皇太子殿下を摂政に立てて、執務を代行していただいてはどうかという案もあるが、結論はなかなか出そうにない。
 歴史をふり返れば、天皇の譲位は珍しいことではなかった。ここ200年、譲位はないが、それ以前、約半数の天皇は、生前退位をされていたのだ。
 古代も、譲位は頻繁に行われていた。7世紀から8世紀、そして平安時代後期に、ピークがあり、それぞれに異なる事情が隠されていた。前半は「利用される王家の悲劇」であり、後半は「暴走する王家」である。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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