マネーの魔術史 (7)

現代にも尾を引く地金論争

執筆者:野口悠紀雄 2017年7月13日
エリア: ヨーロッパ アジア
(C)AFP=時事

 

 ナポレオン戦争後のイギリスで、通貨を巡って国をあげた論争が起きた。それは、「地金(じきん)論争」と呼ばれる。

 地金主義者と呼ばれる人々は、物価高騰とポンド下落の原因は、金兌換が停止されてイングランド銀行券が過剰に発行されたことにあるとした。そして、銀行券の発行を減少させ、兌換を再開すべきだと主張した。この主張を最も熱心に行ったのが、経済学者のデイビッド・リカードだ(ただし当時は一介の評論家に過ぎなかった)。

 これに対して、銀行券が商業手形の割引によって発行される限り、過剰発行は起こり得ないという考えがあった。これは反地金主義と呼ばれた。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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